炭についてのよくある質問
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1 炭の種類や作り方について
Q04 白炭と黒炭の違いは?
Q05 「備長炭」とはどんな炭ですか?
Q06 活性炭と木炭はどう違うのですか?
Q07 炭には品質基準はありますか?
2 炭の生産量や輸入量について
Q08 木炭の生産量、輸入量はどれくらいですか?
Q09 炭やきさんは、今どれくらいるのでしょうか?
Q10 炭の産地はどこですか?
3 炭と環境とのかかわりについて
Q11 炭は木からできています。木を切ることは森林破壊にはなりませんか?
Q12 炭を燃やせば CO2 が出ます。地球温暖化が進むのではありませんか?
Q13 炭が地球温暖化防止に役立っているというの本当ですか?
Q14 木炭が環境にやさしい燃料というのは、どういうことですか?
4 燃料としての炭の利用について
Q15 炭はどこで買えますか?
Q16 炭に上手に着火するにはどうしたいいですか?
Q17 一般の人が炭を使って美味しく焼くにはどうしたらいいですか?
Q18 家庭で炭を使う時の注意点を教えて下さい。
Q19 木炭がはぜるのですが、どうしたら防ぐことができますか?
Q20 木炭の保存はどのようにしたらよいですか?
Q21 着火が早くて火もちがよく、爆跳しない備長炭はないのですか?
Q22 食材を炭で焼いた際、高級な白炭の方がより香ばしい香りがつくのですか?
Q23 備長炭にはいろいろ種類がありますが、国産と中国産では燃焼温度はどれくらい違うのですか?
Q24 炭を燃やしたら煙が出ました。
Q25 燃焼時、炭から炎が出ていないのは火力が弱いからではないですか?
Q26 炭火で肉や魚などを焼くとおいしいと言われるのはなぜですか?
Q27 炭をやくことと木を燃やすことはどう違うのですか?
Q28 炭が燃えるのはなぜですか?
Q29 炭の原料になる木の種類によって炭の性質は変わるのですか?
Q30 炭にする樹種が同じなら、炭の品質はほぼ同じになるのですか?
Q31 炭を還元剤に使うとは、どういうことですか?
Q32 まだ燃えている炭を消すにはどうしたらいいですか?
5 燃料以外での利用について
Q33 ご飯を炊く時に炭を使うとふっくら炊けると聞きました。どのように使うのですか?
Q34 ポットや水差しに炭を入れると水がおいしくなる?
Q35 下駄箱や冷蔵庫に炭を入れると消臭効果がある?
Q36 お風呂に炭を入れるとどんな効果がありますか?
Q37 床下に木炭を入れると、どんな効果がありますか?
Q38 室内の湿気を調節するための効果的な炭の使い方は?
Q39 なぜ炭で臭いや湿気が取れるのですか?
Q40 炭を農作物や家庭園芸用の土に利用すると、どのような効果が得られますか?
Q41 雪の積もった水田、畑地に炭をまくと、雪が早く消えますか?
Q42 金魚や熱帯魚などの水槽に炭を入れると、どんな効果がありますか?
Q43 炭を使って川や池の水の浄化はできますか?
Q44 ペット、家畜のにおいを炭で消臭できますか?
Q45 養豚、養鶏などの飼料に木炭を使うとどんな効果がありますか?
Q46 枕や敷きマットなどに炭が使われている商品がありますが、どんな効果がありますか?
Q47 インテリアとして炭を使った置き物などが販売されています。どんな効果がありますか?
Q48 内装用建材やシート、畳など、木炭を使った建築材が販売されていますが、どんな効果がありますか?
Q49 野菜や果物の鮮度保持に木炭を使うにはどうしたらよいですか?
Q50 炭には電磁波を遮蔽する機能はありますか?
Q51 木炭画に使われる木炭(コンテ)にはどんな木が使われていますか?
Q52 炭には殺菌効果はありますか?
Q53 炭は最先端技術にも使われていると聞きましたが、どんな分野に使われているのですか?
Q54 炭が入った黒いそばや黒いケーキが話題になっています。炭を食べても大丈夫なのですか?
6 オガ炭について
Q55 オガ炭とはどんな炭ですか?
Q56 オガ炭はいつ頃できたのですか?
Q57 オガ炭と煉炭はどう違うのですか?
Q58 炊飯や飲料水にオガ炭を入れても効果は期待できますか?
7 炭を燃やした後の灰について
Q59 炭の粉や灰は、人体に入った時にアスベストのような悪影響はないのですか?
Q60 火鉢で炭を使っていると、灰の上に石のような塊が残ったが、これは何ですか? 化学物質が混入したものではないのですか?
Q61 炭によって灰の色が白かったり、黄色かったするのはなぜですか?
Q62 炭を燃やした後にできる灰の利用方法を教えて下さい。
1 炭の種類や作り方について
Q01 炭の種類にはどんなものがありますか?
A 作り方や形、使い方などによって、いくつかの分け方があります。炭化方法(炭の作り方)による種類分けでは、備長炭などの「白炭」と、茶道用や暖房用の炭のような「黒炭」があります。形状による種類分けでは使いやすい大きさに切った「切り炭」、製材した時に出るオガ粉を圧縮・加熱して作るオガライトを炭化した「オガ炭」、粉状の「粉炭」などがあります。原料による種類分けでは、樹種ごとに「クヌギ炭」、「ナラ炭」、「竹炭」などがあります。用途による種類分けでは「土壌改良用木炭」、「調湿用木炭」などがあります。
Q02 炭はいつ頃から使われてきたのですか?
A 炭の利用は、人類によるの火の制御と同時期で、30~70万年前頃とされています。日本に現存するものでは、愛媛県肱川村の30万年前生成の洞窟から出土した木炭が日本最古の木炭とされており、その一部は社団法人全国燃料協会に保管されています。
Q03 炭をやく方法には、どんなものがありますか?
A 大きく分けて、「無蓋製炭法」「坑内製炭法」「伏せやき法」「簡易製炭法」「炭窯製炭法」「平炉製炭法」「機械炉による製炭法」の7つがあります。
無蓋製炭法は、木の枝などの炭化法で、平地や小さな穴を掘った場所に枝を積み重ねて火を着け、次々に枝をかぶせて不完全燃焼させ、最後に土か水をかけて消火する方法です。
坑内製炭法は、土に穴を掘り、枯れ枝でたき火をし、その上に炭材をのせ、その上を枝をでおおい、十分に炭材に火がついたら土をかぶせて消火する方法です。
伏せやき法は、平地、あるいは土中に20~30cmの長方形の穴を掘り、その上に炭材を積み、上部に草、土などでおおい、点火して炭化する方法で、点火する箇所の反対側に煙突をつけます。煙突の煙の色で炭化の度合いを判断し、消火の際は煙突を抜いて空気を遮断します。
簡易炭化法は、移動式炭化炉、組立式炭化炉、ドラム缶炭化炉などによる方法です。
炭窯製炭法は、粘土や土を基本材料にして炭窯を作りって製炭する方法で、大きく分けて黒炭窯と白炭窯があります。
平炉製炭法は、平坦なコンクリートの上にオガ粉、木材チップ、樹皮などを積み上げて点火して炭化する方法です。コンクリート床の下に通風口を設けて、床の端に煙突をつけて通風を促します。燃え上がりつつある火に原料をかぶせながら炭化します。
機械炉による製炭法は、ロータリーキルン、揺動式炭化炉などによる大規模な機械式製炭炉による製炭方法です。
Q04 白炭と黒炭の違いは?
A 炭は大きく分けて備長炭などの「白炭」と、茶道用・暖房用に使われる「黒炭」があります。大きな違いは消火方法にあり、白炭は消火の時に炭窯から火のついた状態で引き出し、消し粉と呼ばれる灰をかぶせて消火します。この灰が炭に付着していることからこの名称がついたとされています。黒炭は炭化の最終段階で窯口、排煙口を土などで密閉して、窯への空気の流入を止めて消火します。白炭の特徴は、(1)皮がついていない、(2)たたくと硬い金属音がする、(3)表面が白く、硬い、(4)断面には割れ目が少なく、光沢がある、(5)火つきが悪いが火もちがよいことなどが挙げられる。一方、黒炭の特徴は、(1)皮がついている、(2)たたくと鈍い音がする、(3)表面が黒く、崩れやすい、(4)断面には割れ目が多い、(5)火つきがよいが火もちは比較的短いことなどが挙げられます。
Q05 「備長炭」とはどんな炭ですか?
A 「紀州備長炭」は和歌山県だけでなく、現在の和歌山県全域と三重県南部が産地の「ウバメガシ」・「樫」を原料にした白炭を指します。
「備長炭」の名は、通説では元禄年間(1688~1704年)、備中屋長左衛門が発明したのが始まりとされていますが、万治年間(1658~60年)紀州北牟婁郡の炭焼きであった大津市右衛門が改良したという説もあり、定かではありません。
備中屋長左衛門は紀州田辺藩城下町の炭問屋で、享保15年(1730年)から嘉永7年(安政元年にもあたる1854年)までの124年間に4人存在し、この炭問屋の取扱商品を備長炭と名付けたと言われ、現在の和歌山県田辺市の東、旧秋津川村付近の製炭者により改良されたものと考えられています。(『炭』岸本定吉 著 創森社刊)
備長炭には「紀州」のほか、高知県の「土佐備長炭」、宮崎県の「日向備長炭」などがあります。
Q06 活性炭と木炭はどう違うのですか?
A 活性炭は、木炭、ヤシ殻炭、石炭などを、水蒸気や二酸化炭素などで高温処理するガス賦活法、あるいは未炭化原料を塩化亜鉛などの水溶液に浸した後に高温で焼いて処理する薬品賦活法で処理された炭をいいます。木炭に比べて孔が小さく、比表面積が大きく、吸着性能も高いのが特徴です。
Q07 炭には品質基準はありますか?
A 現行では以下の2つがあります。
(1)「木炭の規格」(平成15年3月 社団法人全国燃料協会・日本木炭新用途協議会)
(2)「新用途木炭の用途別基準」(平成16年3月 社団法人全国燃料協会・日本木炭新用途協議会)
2 炭の生産量や輸入量について
Q08 木炭の生産量、輸入量はどれくらいですか?
A 国内生産量は、1940年(昭和15年)にピークとなる約270万トンが生産されました。戦後は、原油の輸入自由化(昭和35年・1962年)をきっかけに石油の利用が中心となり、木炭の生産量は以後減少し、現在は26,740 トン(2008年、粉炭含む)です。輸入量は141,202トンで、中国が最も多く、以下、マレーシア、インドネシアとなっています。
Q09 炭やきさんは、今どれくらいるのでしょうか?
A 平成20年現在で、備長炭などの白炭の生産者数が629人、暖房用などの黒炭の生産者が3,464人、竹炭の生産者が989人となっています。年々生産者の方々の高齢化が進んでおり、生産者数も減少が続いています。
Q10 炭の産地はどこですか?
A 平成20年の統計では、日本の47都道府県のすべてで炭が生産されています。備長炭のような白炭の生産量は、和歌山県(1,692トン、48.1%)、宮崎県(569トン、16.2%)、高知県(567トン、16.1%)、大分県(136トン、3.9%)、愛媛県(93トン、2.6%)などとなっています。暖房用などの黒炭の生産量は、岩手県(4,321トン、35.1%)、北海道(2,585トン、21.0%)、福島県(657トン、5.3%)、熊本県(650トン、5.3%)、鹿児島県(519トン、4.2%)となどなっています。
3 炭と環境とのかかわりについて
Q11 炭は木からできています。木を切ることは森林破壊にはなりませんか?
A 森林破壊ではありません。むしろ次の森林を育てるために伐採しています。
国内産の炭の多くは広葉樹で、炭にするには樹齢が10~30年の木が適しています。この頃に伐採すると切り株から新しい芽が出て、新しい森が生まれます(萌芽更新といいます)。また、木炭生産者は太い幹だけではなく細い枝も無駄なく利用します。そのため、木炭原木を切った山は林地残材も少なく、日光の当たるきれいな山になり、次の森づくりができやすくなります。
Q12 炭を燃やせばCO2 が出ます。地球温暖化が進むのではありませんか?
A 確かに炭を燃やせば二酸化炭素が排出されます。しかし、これに含まれる炭素は、炭の原料になる木や竹が生長する過程で光合成によって大気から吸収したものです。このため、炭を燃焼させても全体から見れば大気中の二酸化炭素量は増加していないことになります。この性質を「カーボンニュートラル」といいます。
Q13 炭が地球温暖化防止に役立っているというの本当ですか?
A 木や竹を炭化すると、その体を構成する炭素分のうち、30~40%が炭として残ります。この炭の炭素分は、植物が光合成によって生長することで大気中から取り込まれたものです。これを燃やすことなく、土壌改良資材として農地に施用したり、水質浄化などに利用すれば、その炭素は「炭」の形で残りますから、温室効果ガスである二酸化炭素を大気中から減少させることになるのです。
Q14 木炭が環境にやさしい燃料というのは、どういうことですか?
A 木炭は平成20年10月1日より、地球温暖化防止に貢献するバイオマスエネルギーとして、経済産業省、環境省、農林水産省によって法案で位置づけられました(農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律=通称:農林漁業バイオ燃料法)。木炭を燃料にすることは、ガスや電気を使用するよりも温室効果ガスの発生も少なく、二酸化炭素の吸収量の少ない老齢木を利用し、吸収量の多い若い木を増やして森を若返らせることにつながり、地球温暖化を抑制することに貢献しているのです。
4 燃料としての炭の利用について
Q15 炭はどこで買えますか?
A お近くの燃料店、ホームセンター、アウトドアショップなどで販売しています。国産の木炭は日本の森林を若返らせ、里山の環境保全などに役立っています。ぜひ国産の木炭をお買い求め下さい。
Q16 炭に上手に着火するにはどうしたいいですか?
A 市販の着火剤を利用するか、「火熾し(ひおこし)」という道具を使ってガスレンジで着火して下さい。火の強さは弱火にすると爆跳しにくくなります。野外の場合は、古新聞をたたんでねじったものをいくつか炭の間にいれてから着火するとよいでしょう。いずれの場合も、炭火コンロや七輪の中に炭を並べる時に、煙突状に並べると、対流による効果で着火しやすくなります。
Q17 一般の人が炭を使って美味しく焼くにはどうしたらいいですか?
A 「強火の遠火」で焼いて下さい。ご家庭ではバーベキューコンロや七輪などで炭火焼きをされると思いますが、炭火の火力は強いので、食材と炭火の距離が近いと、すぐに焦げてしまいます。また、炭が真っ赤におこってから食材を焼き始めると、火力が安定してムラなく焼けます。
Q18 家庭で炭を使う時の注意点を教えて下さい。
A 炭が燃える際には一酸化炭素が出ます。深刻な場合は死に至る場合がありますので、1時間に2、3度を目安に、窓を開けるなどして換気をして下さい。また、新しい炭をつぎ足す際は、いきなり燃えている炭の上に置くのではなく、しばらく炭火の近くにおいて暖めてからつぎ足すと、はぜにくくなります。
Q19 木炭がはぜるのですが、どうしたら防ぐことができますか?
A 爆跳(ばくちょう)と呼ばれる現象で、原因は、(1)炭が湿っている、(2)未炭化の炭である、(3)老木で作られた炭である、(4)炭をいきなり火にくべる、などが挙げられます。主な原因は(4)で、木炭の細かな孔に残っている水分が、急激に加熱されたことによって膨張し、炭が破裂することで起こります。これを防ぐためには、火のそばに次にくべる炭を置いてしばらく暖めてから継ぎ足すとよいでしょう。
Q20 木炭の保存はどのようにしたらよいですか?
A 湿度の少ないところに保管すれば、いつまでも変わらずに使うことができます。ただし、木炭は臭いを吸着しますので、長期間保管した炭は燃焼時に臭いが出ることがあります。長期間保存するよりは、布や紙に炭をくるんで冷蔵庫、下駄箱の脱臭・調湿にお使いいただくことをお勧めします。
Q21 着火が早くて火もちがよく、爆跳しない備長炭はないのですか?
A 炭はそれぞれに特徴を持っています。着火のよい炭は軟らかく、その分火もちは短くなり、着火の遅い炭は硬く、火もちは長くなりますので、それぞれの「個性」とお考えいただきご理解下さい。原料が自然の樹木ですので工業製品と違い、絶対に爆跳しない炭は残念ながらございません。湿度が低く風通しのよい場所に保管し、急激な温度上昇を避けることで、ある程度爆跳を防ぐことができますので、お試し下さい。
Q22 食材を炭で焼いた際、高級な白炭の方がより香ばしい香りがつくのですか?
A 炭火焼きの香りは、燃えている炭に落ちた脂分やタレなどが煙になり、それが食材に当たってつく香りと考えられています。炭の種類によって効果が異なるかどうかの科学的な研究は見当たりませんが、火力によって香りの着き方が変わることはあるかも知れません。
Q23 備長炭にはいろいろ種類がありますが、国産と中国産では燃焼温度はどれくらい違うのですか?
A 和歌山県林業試験場が行った研究結果では、ウバメガシを原木にした紀州備長炭と荒カシなどのカシ類を原木とした白炭に比べて、中国産白炭は物質の熱伝導のしやすさを示す伝熱率が低く、燃焼時間も国産の約5時間に比べて1時間程度短くなっています。
ただ、炭は産地、原木、炭化方法などによっても異なるため、プロのユーザー様には、実物を実際にお使いになって比較することをお勧めします。
資料:「広葉樹白炭の製炭及び燃焼特性」和歌山県林業試験場特用林産部(www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070109/seika/h17/1743.pdf)
Q24 炭を燃やしたら煙が出ました。
A 煙の出る炭は、炭になりきっていない未炭化のもので、不良品です。国内産の炭ではほとんどありませんが、輸入品のバーベキュー用木炭などに時々あるようです。商品を購入した販売店に相談してみて下さい。
Q25 燃焼時、炭から炎が出ていないのは火力が弱いからではないですか?
A 炭は炎を出さない燃料で、赤外線による輻射熱で食材を焼き上げます。輻射熱とは、高温の固体表面(この場合は炭)から低温の固体表面(この場合は食材)に、その間の空気などの気体の存在に関係なく、 直接電磁波の形で伝わる熱のことです。炎が出る炭は揮発分呼ばれる不純物が多く残る未炭化の炭で、食材を炎で焦がしたり、煤がつく原因になりますので、炎の出ていない状態が正常な炭の燃焼です。
Q26 炭火で肉や魚などを焼くとおいしいと言われるのはなぜですか?
A 炭は煙、炎を出さない燃料で、赤外線による輻射熱で食材を焼き上げるためです。輻射熱とは、高温の固体表面(この場合は炭)から低温の固体表面(この場合は食材)に、その間の空気などの気体の存在に関係なく、 直接電磁波の形で伝わる熱のことです。また、ガスでの調理と異なり燃焼ガスに水分を含まないため、外側がパリッと焼き上がり食材のうまみを逃がさず、それでいて中まで短時間でよく火が通り、おいしく焼けるのです。
Q27 炭をやくことと木を燃やすことはどう違うのですか?
A 炭をやくのは「炭化」、木を燃やすのは「燃焼」です。炭化と燃焼の違いは、炭化がごくわずかな空気の中で行われるのに対して、燃焼は十分な空気の中で行われる点です。空気が十分であれば完全燃焼して、木は灰になりますが、空気が不十分であれば不完全燃焼になって炭ができます。
Q28 炭が燃えるのはなぜですか?
A 「燃える」という現象は、一般的には可燃物質と酸素の化学反応のうち、発熱と発光を伴う「燃焼」を指します。炭の8割~9割以上は炭素(C)です。これが酸素(O)と化学反応を起こして発熱、発光して、その結果、CとOが結びついて一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)ができます。
Q29 炭の原料になる木の種類によって炭の性質は変わるのですか?
A 同じ炭のやき方をしても、木の種類によって炭の性質は異なります。広葉樹と針葉樹の違いがわかりやすい例です。針葉樹の炭は内部にできる孔の大きさが広葉樹に比べて大きく、孔と孔の間の壁の厚さが薄いので、軟らかい炭になります。このため、スギやマツなどの針葉樹の炭は酸素が内部に入りやすくなり、火つきがよく、すぐに高い燃焼温度が得られます。日本刀の鍛錬にマツ炭が使われるのは、一気に火力を上げることができるためです。反面、火もちは悪く、長時間の燃焼には向きません。
Q30 炭にする樹種が同じなら、炭の品質はほぼ同じになるのですか?
A 白炭の場合は、まだ燃えている炭材を炭窯から引き出して、消し粉をかけて消火をするので、品質はほとんど同じです。黒炭の場合は、炭窯を密閉して消火をするので、炭窯の場所によって炭化温度が異なるため、炭の品質は異なります。
Q31 炭を還元剤に使うとは、どういうことですか?
A 還元は、酸化の逆で、物質から酸素を減らす、または水素を加えることで、そのような作用のある物質を還元剤といいます。還元剤としての炭は、主に製鉄用に使われており、炭を燃焼させた中に鉄鉱石を入れ、鉄鉱石(酸化鉄=Fe203)の中の酸素を取って鉄(Fe)にするのに使われています。炭は約9割が炭素でできていて不純物が少なく、反応性が高い上に、同等の性質の他の製品よりも価格的にも優位性があります。
Q32 まだ燃えている炭を消すにはどうしたらいいですか?
A 「火消し壷」という壷に、火箸などを使って、火のついた炭を入れてふたをしてください。空気が遮断されて安全に消火できます。この炭は着火しやすいので、次回の種火にご利用下さい。野外の場合でも、火消し壷をお使いになることをお勧めします。火のついたコンロに水をかけると灰が大量に舞い上がるので、お勧めしません。
5 燃料以外での利用について
Q33 ご飯を炊く時に炭を使うとふっくら炊けると聞きました。どのように使うのですか?
A 水道水のカルキ(塩素)臭、そしてお米のぬか臭さが炭に吸着されること、また、炭からミネラル分が溶け出て水質がよくなることなどから、ふっくらおいしく炊き上がると考えられています。
使用する炭は、備長炭のような硬い炭、白炭を使用して下さい。木炭の目安は、お米3合(540ml)に対して直径2~3cm、長さ8cm程度、または50g程度です。使用前によく水洗いし、殺菌のため10~15分程度煮沸して下さい。水洗いの際には、炭が吸着してしまうため、絶対に洗剤などを使用しないで下さい。使用回数は30回程度です。ご使用の都度、水洗い、煮沸を行って下さい。なお、一度他の用途に使用した木炭は使用しないで下さい。
Q34 ポットや水差しに炭を入れると水がおいしくなる?
A 木炭がカルキ(塩素)臭の原因となる塩素などを吸着して減少させ、口当たりがまろやかになります。
使用する木炭は、備長炭のような硬い炭、白炭を使用して下さい。木炭の目安は、水1リットルに対して直径2~3cm、長さ8cm程度、または50g程度です。使用前によく水洗いし、殺菌のため10~15分程度煮沸して下さい。水洗いの際には、炭が吸着してしまうため、絶対に洗剤などを使用しないで下さい。使用回数は30回程度です。ご使用の都度、水洗い、煮沸を行って下さい。なお、一度他の用途に使用した木炭は使用しないで下さい。木炭を使用した水は塩素が吸着され殺菌力が低くなるので、できるだけ早く使い切って下さい。また、木炭を入れた水は弱アルカリ性になる場合があります。身体に不調を感じた時は飲用を中止し、医師の指示に従って下さい。
Q35 下駄箱や冷蔵庫に炭を入れると消臭効果がある?
A 木炭には小さい孔がたくさんあり、その表面積は1g当たり200~400平方mにもなります。この孔が臭いのもとを吸着します。使用する際はストーブなどの火気・熱源を避けて置いて下さい。効果がなくなったら水洗い後、陰干しをしてご使用下さい。木炭には臭いのもとが吸着されるため、使用済みの木炭は、飲料水、風呂、炊飯用などに使用しないで下さい。
Q36 お風呂に炭を入れるとどんな効果がありますか?
A 木炭からミネラルが溶け出して水が弱アルカリ性になるとともに、浴槽の水の汚れを抑えます。
使用する木炭は、備長炭のような硬い炭、白炭を使用して下さい。使用前によく水洗いをし、浴槽が傷つかないように網袋、布袋等に入れます。ステンレスなどの金属製浴槽の場合は、木炭が接触すると金属が劣化することもありますのでご注意下さい。木炭の目安は、一般家庭の風呂(300リットル)で、1kg程度です。給湯式の場合は湯を入れ始めた時から、風呂釜式の場合は水の時から浴槽に入れてご使用下さい。繰り返し使用する際は、3~4回を目安によく水洗いして陰干しをして下さい。2ヶ月を目安に取り替えて下さい。使用済みの木炭は炊飯・飲料水用などに使用しないで下さい。
Q37 床下に木炭を入れると、どんな効果がありますか?
A 床下の湿気を吸着するとともに、乾燥時には吸い取った湿気を放出して、年間を通じて適度な湿度を保ちます。
使用する炭は、通気性があり、しかも粉が出ない不織布等に入れて下さい。炭の量の目安は、1坪(3.3平米)当たり160~200リットル程度です。敷設する際は、床下の金属管に木炭が接触しないようご注意下さい。接触すると金属が劣化する場合があります。
1階床下に施工する場合は、通気性を確保するために、上部に20cm以上の空間を設けて下さい。また、床下の換気口を閉鎖しないで下さい。住宅の立地条件、土質条件などによっては、効果が期待されない場合がありますので、住宅床下調湿用木炭メーカーまたは販売店にご相談下さい。
Q38 室内の湿気を調節するための効果的な炭の使い方は?
A 押し入れや洋服ダンスなどに入れたり、天井や壁などに施工すると湿気を吸着し、乾燥時には吸着した水分を放出して湿度を一定に保ちます。
使用する際はストーブなどの火気・熱源を避けて置いて下さい。効果がなくなったら日光に当て、天日干しをして下さい。使用済みの木炭は、飲料水、風呂、炊飯用などに使用しないで下さい。
Q39 なぜ炭で臭いや湿気が取れるのですか?
A 炭の原料は木です。木の内部には、根から吸い上げた水や養分をすみずみに行き渡らせるための管があります。木を炭にすると水分やその他の成分が抜けて、3分の1ほどの大きさに縮んでしまいます。内部の管も同じように縮んで小さな穴が無数にできます。臭いや湿気は、これらの穴の中に取り込まれます。
こうしたはたらきを「物理吸着」といいますが、低温でやいた炭は酸性になるため、臭いのもとになるアンモニアなどのアルカリ性の物質をよく吸着するという研究結果が報告されています。これは「化学吸着」と呼ばれています。
Q40 炭を農作物や家庭園芸用の土に利用すると、どのような効果が得られますか?
A 炭を土に混ぜると、土の保水性・透水性を高め、植物の生育を助けます。木炭は土壌改良資材として政令指定されています(地力増進法施行令 政令第354号)。
使用する際は、炭を十分に土と混ぜて下さい。地表面に露出すると風雨などにより流出したり、土壌中に層を成すと効果が認められないことがあります。土壌の状態(酸性・アルカリ性など)によって木炭の使用量を加減して下さい。播種・植付をする時は、炭を土壌に散布(混合)後、潅水または降雨の後に行って下さい。
Q41 雪の積もった水田、畑地に炭をまくと、雪が早く消えますか?
A 太陽からの熱を吸収して、早く雪を溶かします。また、融雪後は土壌を改良し植物の生長を助けます。
炭の量の目安は1平方m当たり18g、直径4mm以下程度の大小の木炭粉を混ぜて、雪面に均一に散布して下さい。雨が降った後など、雪がシャーベット状になった時に散布すると効果的です。散布量が多すぎると断熱効果がはたらいて融雪が遅れることがあるので注意して下さい。
Q42 金魚や熱帯魚などの水槽に炭を入れると、どんな効果がありますか?
A 水生生物の水槽などに木炭を入れると、水道水に含まれる塩素を吸着します。
炭を使用する前に、よく水洗いをして下さい。魚類などの水生生物の水槽に入れる場合は、10リットル当たり50g程度が目安です。定期的に水槽内の清掃を行い、カビ等の発生にご注意下さい。効果がなくなったら木炭を交換して下さい。
Q43 炭を使って川や池の水の浄化はできますか?
A 水中の溶解性物質が吸着され、炭の表面にできる微生物の膜が水中の有機物を分解し、川や湖沼、池、浄化槽の処理水などの水をきれいにします。
木炭を設置する際に留意することは、まず、木炭と処理する水とが接触しやすい構造とすること、そして、水質浄化の効果は主に微生物の分解作用によるので、水の流量・流速などを十分に検討することです。微生物の活動は、一般に水温15℃以下では活動が鈍るので、寒冷地域で使用する際には注意が必要です。また、河川や水路などに浄化装置を設置する場合は、管理者の許可を得た上で行って下さい。
処理する水の汚濁の度合いが大きい場合は、沈澱・ろ過などの前処理工程が必要となります。処理水中の酸素が不足しないよう、ばっ気を必要とする場合もあります。
処理中は土砂等で木炭が目詰まりし、思うような効果が得られないこともあるので、炭の交換及び施設の清掃が容易にできる構造として下さい。
一度使用した炭は、飲料水、風呂、炊飯などには使用しないで下さい。
Q44 ペット、家畜のにおいを炭で消臭できますか?
A 家畜の飼育舎に木炭を設置すると、悪臭の主成分であるアンモニアをよく吸着します。
使用する際はストーブなどの火気・熱源を避けて置いて下さい。効果がなくなったら新しい木炭と交換して下さい。使用済みの木炭は、飲料水、風呂、炊飯用などに使用しないで下さい。
Q45 養豚、養鶏などの飼料に木炭を使うとどんな効果がありますか?
A 木炭の吸着作用により家、畜の腸内の異常発酵を抑えます。
使用する炭は直径0.1~0.3mm程度の粉炭で、飼料に1~2%加え、よく混ぜます。木炭粉の大きさは、家畜に大きさによって異なるので、家畜の状態により使用方法、使用量を加減します。
Q46 枕や敷きマットなどに炭が使われている商品がありますが、どんな効果がありますか?
A 木炭を利用した寝具は、湿度を一定に保ち、消臭にも効果があります。
使用する際は、ストーブなどの火気・熱源の近くに置かない、吸湿性が強いので、湿気の少ないところに保管するなど、置き場所に留意して下さい。手入れは1ヶ月に3~4回、日光に当てて天日干しをするだけで十分です。木炭の入った袋や枕ごと、または木炭マットの丸洗いは絶対に避けて下さい。また、強い衝撃を与えたり乱暴に扱うと木炭の粉が外部に漏れ、黒く汚れることがあるので注意して下さい。中の木炭は、炊飯、飲料水、風呂用などに使用しないで下さい。
Q47 インテリアとして炭を使った置き物などが販売されています。どんな効果がありますか?
A 自然の作り出す炭の造形を楽しみながら、消臭・調湿・空気浄化などの作用が期待できます。使用する木炭は、ストーブなどの火気・熱源を避けて置いて下さい。また、使用済みの木炭は、飲料水、風呂、炊飯用などに使用しないで下さい。
Q48 内装用建材やシート、畳など、木炭を使った建築材が販売されていますが、どんな効果がありますか?
A 木炭が室内のホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)等の有害物質を吸着し、シックハウス対策として活用できます。
木炭を使ったパネル、ボード、塗料、シートなどの建材が開発されていますので、それぞれのメーカーが定めた使用方法に従って下さい。設置後は、ストーブなどの火気・熱源を近くに置かないようにして下さい。
Q49 野菜や果物の鮮度保持に木炭を使うにはどうしたらよいですか?
A 木炭は、野菜や果物などが熟成・老化する際に出すエチレンガスを吸着するとともに水分を保持し、鮮度を保ちます。
木炭を微粉末または粒状化したシート、マットに成形した製品が多く使われており、青果物、果実、花卉で効果が確認されています。脱臭効果があるので、果物など、香りを重視する場合はご注意下さい。保管する際は、ストーブなどの火気・熱源の近くに置かないで下さい。
Q50 炭には電磁波を遮蔽する機能はありますか?
A 1000℃以上で炭化した炭は、電気抵抗が低く、電磁波を遮蔽する特性があることがわかってきました。実用化にはまだ時間が必要なようですが、今後の研究に期待が寄せられています。
Q51 木炭画に使われる木炭(コンテ)にはどんな木が使われていますか?
A ヤナギ、ウコギ、ポプラ、サクラなどの木が使われています。
Q52 炭には殺菌効果はありますか?
A ありません。炭の約9割は炭素でできており、殺菌をする成分は含まれていません。
Q53 炭は最先端技術にも使われていると聞きましたが、どんな分野に使われているのですか?
A 炭の9割程度は炭素(C)でできています。宝石や研磨剤として利用されているダイヤモンドも炭素からできており、火をつければ木炭と同じように燃えます。木炭に触媒を使って圧力とかけながら高温にすると、ダイヤモンド薄膜ができることが報告されています。研磨剤や丈夫な表面コーティング材としての利用が期待されています。また、半導体や軽くて丈夫な素材として注目されている新素材、カーボンナノチューブを木炭から作る研究も行われています。このほか、備長炭などの白炭は、電磁波を遮蔽するはたらきがあることが知られています。
Q54 炭が入った黒いそばや黒いケーキが話題になっています。炭を食べても大丈夫なのですか?
A 木炭は食品衛生法に定める食品添加物のうち、長年使用されてきた天然添加物として品目が決められている「既存添加物」(平成19年9月11日改定)に定められていますので、問題ありません。
6 オガ炭について
Q55 オガ炭とはどんな炭ですか?
A オガ炭はオガライトを炭化した炭です。オガライトは製材した際に出るオガ粉を圧縮・成形した人工薪です。強い圧力をかけながら表面を加熱して固めます。オガ粉にもとから含まれるニグニンという物質が粘結剤の役割を果たすので、接着剤などは一切含まれていません。オガ炭にも黒炭と白炭があり、火もちのよいオガ炭の白炭は、焼肉店などで広く利用されています。
Q56 オガ炭はいつ頃できたのですか?
A オガ炭がいつ頃できたかは正確にはわかっていませんが、オガライトは戦後、大阪の北本軍作氏によって発明されたと言われています。
Q57 オガ炭と煉炭はどう違うのですか?
A オガ炭は、オガ粉を圧縮・加熱し、オガ粉に含まれるリグニンという物質を利用して成形したオガライトを炭化したものです。接着剤などは含まれていません。煉炭は無煙炭という石炭を主原料にしてでんぷんなどで固め、縦方向に穴を空けて火力を強くした燃料です。オガ炭の原料は木材、煉炭の原料は石炭という点が大きな違いといえるでしょう。
Q58 炊飯や飲料水にオガ炭を入れても効果は期待できますか?
A オガ炭も、高温でやいた白炭であれば効果は期待できますが、細かな粉が出るので、備長炭などの、木を原料にした白炭をお使いになることをお勧めします。
7 炭を燃やした後の灰について
Q59 炭の粉や灰は、人体に入った時にアスベストのような悪影響はないのですか?
A 木炭、木灰とも、食品衛生法に定める食品添加物のうち、長年使用されてきた天然添加物として品目が決められている「既存添加物」(平成19年9月11日改定)に定められています。安心してお使い下さい。
Q60 火鉢で炭を使っていると、灰の上に石のような塊が残ったが、これは何ですか? 化学物質が混入したものではないのですか?
A 灰がガラス化したものです。炭の燃焼温度が高く、灰の成分が溶解し、温度が下がるとともに固まったものです。塊は取り除いてそのままお使い下さい。化学物質が混入したものではありません。
Q61 炭によって灰の色が白かったり、黄色かったするのはなぜですか?
A 灰の色は炭の原料となる樹木の種類や、その育つ土壌などによって異なります。灰の成分は、樹木が地中から吸い上げたミネラル分です。茶色がかった灰は、鉄分の多い土壌で育った木を原木にした炭であるなど、木の育った場所によって灰の色は変わります。
Q62 炭を燃やした後にできる灰の利用方法を教えて下さい。
A 炭を燃やした後の灰はアルカリ性で、ミネラル分を含んでいますので、家庭園芸の土づくりなどにご利用下さい。燃え残りの細かな炭も混じっていると思いますが、これらも一緒に土とよく混ぜると、酸性の土の中和に役立ちます。また、容器などに保存しておいて、春先に出回る山菜のアク抜きに利用することもできます。